GPS処理中
 Datum設定

GPS(Global Positioning System:全地球測位システム)レシーバーをパソコンにつなぎ、TNT mips 上でその移動経路などを表示する際に、実際の場所と異なる場所にプロットされることがあります。これは、レシーバーの設定が GPS の標準的な測地基準である WGS 1984 になっていない可能性があります。そこで、ここでは測地基準 (Datum) の標準設定と TNTmips での処理方法について解説します。
 またver6.2 までは、この Datum の設定を重ね合わせる画像と一致させなければならなかった作業が、ver6.3 以降では改善されました。その改善点についても紹介します。

Winでのルートトレース
Macでのルートトレース
応用テクニック


本ページ作成時の環境は Windows 98SE,Me(TNTmips 6.5)

このページ内の 目 次
@BesselとWGS84
2つの地図測地基準(Datum)
A改良されたver6.3
ver6.2で重なったのに何故?
BGPS豆知識
精度とサンプルログ




 

BesselとWGS84

日本で作成された地図の多くは、
Bessel1841地球楕円体を採用しています。
数値地図25000地図画像も同様の楕円体を採用して投影しているわけですが、
GPSで得られる座標情報は WGS1984 測地系であり、
食い違いが生じてしまいます。



今から100年以上も昔の1844年(明治44年)、国土地理院は地図投影を行う際、地球表面を近似する地球楕円体にベッセル1841地球楕円体を使用してきました(海上保安庁水路部は1940年より使用開始)。

 一方、GPSは世界中で使用されることから、一部の地域のみ精度良く近似するのではなく、できるだけ忠実に地球を近似した地域に偏りの少ない WGS1984(World Geodetic System) 測地系を採用しています。更に測地基準(Datum)によって加わる補正値を含めると、同じ地点においても、Bessel1841[Tokyo-Japan]測地系とWGS1984測地系では約400mものズレが生じてしまいます。

 市販のGPSレシーバでは、各国のDatumにあわせた変換を可能にした機種も多く流通しておりますが、すべてに統一して使用可能な Datum は、WGS1984 だけなのです。そこで、TNTmipsではGPSレシーバーから出力される座標情報はすべて WGS1984 測地系であると認識して読み込むのです。




 

改良されたver6.3

「今まで、ちゃんとGPSのポイントが表示されていたのに...」
これは、ver6.2以前とver6.3以降でのDatum認識の違いが原因です。
以前は重ねる地図画像とGPSレシーバーのDatumを
一致させる必要がありましたが、ver6.3以降は改良されました。
そのことについて解説します。



繰り返しになりますが、市販のGPSレシーバすべてに統一して使用可能な Datum は、WGS1984 だけです。そこで、TNTmipsではGPSレシーバーから出力される座標情報はすべて WGS1984 測地系であると認識して読み込みます。

 そしてTNTmipsはその受け取った座標値を画面に表示している Datum に合うよう自動的に変換を行い、重ねていきます。ver6.2 以前ではこのような判断をさせるには、手動で Datum を指定する必要があり操作する側も大変でした。しかし ver6.3 以降は TNTmips の対応している Datum であれば、ほとんどDatumを意識することなくルート・トレースの重ねあわせ処理を行うことができます。


▼以上のことをまとめたのが次の図になります。
(図をクリックすると、見やすい pdf ファイルが読み込まれます: 177Kbyte )





▼結論として、TNTmips ver6.3 以降をお使いの方は、

 「GPS レシーバーの Datum 設定を WGS1984 にしてください」

この1点を確かめれば、問題はほとんど起きないと思います。



▼どうしても、GPSレシーバーの Datum 設定を Bessel1841[Tokyo-Japan] のままにしておきたい方は、画像表示のプロジェクション設定を「Unspecified」にしてください。この場合、Bessel1841[Tokyo-Japan]の測地系座標系を持つ画像のみ正しく表示されます。



▼それでもうまく重ならない場合は、地図画像のジオリファレンスを与える段階でのエラーが考えられます。





 

GPS豆知識

GPSを使うにあたって、知っておくと役に立ちそうなことを
いくつか紹介したいと思います。
あくまでも豆知識なので、
さらに詳しく知りたいという方は専門図書などを御覧ください。



▼GPS衛星は、地球のまわりを24個の衛星(予備も含めると約30個)でとりかこみ、6つの軌道に配置され地球1周を約12時間で周っています。つまり、GPS衛星は静止軌道衛星ではなく常時移動していることになります。

衛星運用情報
 アメリカ海軍天文台/沿岸警備隊公表
 ftp://tycho.usno.navy.mil/pub/gps/gpstd.txt



▼3次元での測位には、4個の衛星を用いることになります(2次元測位は衛星3個)。この4個の衛星がどのように配置しているかによって精度が異なります。この衛星は位置精度を指標化したものがPDOP(Position Dilution of Precision)で値が小さいほど理想的な配置となります(通常は5以下が望ましい)。ちなみに最も理想的な衛星の配置は、天頂に1衛星、水平線ぎりぎりでお互いの水平角が120度の3衛星という配置です。


▼通常のカーナビやハンディレシーバーで行うGPS測量は、SPS(Standard Positioning Servise:標準測位サービス)を利用したものです。C/Aコードと航法メッセージだけを使い測位データを得るのですが、単独測位での水平精度は約15mです。以前はSA(Selective availability)コードが含まれていたため、水平精度が約100mでしたが、2000年5月2日よりこのSAコードが解除され精度が飛躍的に向上しました。但し、こういった精度の値は条件の良い場所での結果ですので、実際はビルや地面からの反射、視界の悪さなど、多くの悪条件に制約されることをご考慮ください。なかなか理想の結果を出すのは難しいです。

SA解除前後の精度変化についての参考ページ
 独立行政法人電子航法研究所 衛星航法部
 http://www.enri.go.jp/sat/saoff.htm



▼NMEA0183プロトコルは航海用レーダシステムや水深測定器など海洋で使用する電子機器用にNMEAが制定した通信プロトコルです。

 NMEA0183プロトコルはGPSデータの標準プロトコルとしての印象が強いですが、GPSは様々な機器のひとつに過ぎません。RS-232/422互換のタイミングシグナル(4800bps,1ストップビット,パリティなし,フローコントロールなし)を持っており、7-bit のASCIIキャラクタとして送受信され、パソコンのシリアルコネクタと接続して様々な通信ソフトでデータを受け取ることが可能です。

 一例ですが参考までに、このようなデータが流れてきます。
$GPAPB,V,A,0.22,R,N,V,V,36.5,T,1,37.1,T,,*65
$GPRMB,V,0.22,R,,1,3601.975,N,14006.262,E,24.37,37.1,0.0,V*33
$GPRMC,061940,V,3542.548,N,13948.098,E,0.0,0.0,040601,7.0,W*72
$GPGGA,061940,3542.548,N,13948.098,E,0,0,0.00,71,M,,,,*3D
$GPGSA,A,1,,,,,,,,,,,,,0.00,0.00,0.00*00
$GPGSV,1,1,0*49
 各センテンスは"$"で始まり、次に2文字のDevice IdentifierまたはTalker Type(GPSはGP)が記されます。続いてNMEAセンテンスが3文字、今回は上からAPB(Autopilot Senetnce B)、RMB(Recommended Minimum Navigation Information)、RMC(Recomended Minimum Specific GPS/Transit data)、GGA(Global Positioning Fix Data)、GSA(GPS DOP and Satellites in Use)、GSV(GPS Satellites in View)とそれぞれ情報をセンテンスに分けて区別しています。

 各要素はカンマで区切られ、例えばRMCセンテンスは
$GP*** , 時刻(UTC:OOMMSS) , データ有効性(A:有効/V:無効) , 緯度 , 南北 , 経度 , 東西 , 速度(ノット) , 位置品質 , 日付(DDMMYY) , 方向(北からの角度) , 東西 , チェックサム
という順で記録されています。

NMEAウェブページ
 National Marine Electronics Association
 http://www.nmea.org/






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2001.6.12更新

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