Subject: [ts-mag:00028] OpenGIS Mail Magazine for T.S.U 【第 28号】 Date: Fri, 21 Dec 2001 10:00:18 +0900 From: Taichi FURUHASHI OpenGIS Mail Magazine for Technical Support Users 2001/12/21 Keywords: OpenGIS,TNTmips,JGD2000,WGS84,ITRF,GRS80,Bessel,register オープンGIS テクニカル・サポート専用メールマガジン 第28号「 世 界 測 地 系 と い わ れ て も . . . 」 ################################################################# 株式会社 オープンGIS いよいよ、ver6.6 の出荷がはじまった模様です。 http://www.microimages.com/featupd/v66/ 製品版の最終チェックが済み次第、インストールガイドやその他新機能に ついての情報をご紹介していきたいと考えておりますので、もうしばらく お待ちください。 ですが、せっかくですのでひとつ最新情報を... TNTmips ver6.6 にてようやく平面直角(19)座標系がデフォルト装備され ました。座標系(SYSTEM)名は 「 Japan-19 Plane Orthogonal 」です。 今まで平面直角座標系を使用するには、弊社オリジナルのパラメータファ イルをダウンロードする必要がありましたが、ついにその手間もなくなり、 ver6.6 ではより便利になってきました。 http://www.opengis.co.jp/htm/basic/japan19proj.htm さて、ver6.6 がようやくリリースされたのにもう次期バージョンの話題 ですが、平面直角座標系がデフォルト採用されたのに、予定ではもう来年 の4月には日本の測地系が変わってしまいます。 それではせっかくのデフォルト採用の意味がないじゃないか!! と思われ ますがそんなことはありません。今までの世に出てきた多くのデータは日 本測地系に基づいて作成されてきたデータですので、これらのデータを使 用していくうえで ver6.6 でのデフォルト採用には大きな意味があります。 そして、次期バージョンである ver6.7(予定では2002年5月ごろ) には、 是非とも新しい測地系の使用とスムーズな座標変換をできるようにしたい!! そう考えております。 そのためには、どうしても投影法について勉強し、ミスのないように、 また、よりみなさんに負担とならないように TNTmips の機能を向上して いかなければなりません。 そこで、今回はその中でも基礎となり、しかしわかりにくい世界測地系と いうものにスポットを当ててみます。今週はちょっと長くなってしまいま すが、ご勘弁ください。 国土地理院さんの測量法改正ポスターを見ると、 こんなフレーズが書いてあります。 「緯度・経度の基準がこれまでの日本測地系から世界測地系になります。」 キーワードは「日本測地系」と「世界測地系」。 まずは、そもそも日本測地系とはどんな測地系だったのか? という疑問 を持たれる方もいらっしゃると思います。簡単に言うと、明治のころより 行ってきた測量・観測を元に、ぎりぎり21世紀まで使用されてきたちょう ど日本周辺がうまく表現できるような地球の定義のことです。 法律としては、昭和24年に制定された測量法によって現在まで公共測量 に使用されております。 詳しくは国土地理院さんの「日本測地系」解説ページを見ていただくとし まして >>> http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/datum/main.html 「地球の定義」といいましても、ここで指定しているのは、長半径(赤道半 径)と扁平度(率)、そしてこの回転楕円体(名前は Bessel1841)がどの場所 で一致するかという日本経緯度原点(設置そのものは明治24年)の定義なの です。 ところが時代はどんどんとグローバル化して、世界各国で統一した地球の 定義が必要になってきました。とくに GPS の普及で測量の世界はもちろん カーナビや携帯電話にまで搭載されている昨今、もう日本付近でしか精度 良く表現できない地球の定義から、世界で使用できる地球の定義へと変え る必要がある。というわけで、来年4月より「日本測地系」が「世界測地 系」へと変更されるのです。 ちなみに新しい測地系を「測地成果2000」もしくは「JGD2000」といいます。 さあ、いよいよ話題は「世界測地系」へと変わってきました。 世界測地系、実はこれが非常にわかりにくい。 どうも調べてみますと、世界測地系といっても大きく2つに分けられる そうです。 ひとつはアメリカで管理・定義されている ◆「WGS84 (World Geodetic System 1984)」を用いたもの もうひとつは国際的機関で管理・定義されている ◆「ITRF (International Terrestrial Reference Frame)」を用いたもの そしていろいろな文献・資料・WEB をあたっていくうちに、この2つの世 界測地系を意味する言葉が混在した形で用られているという点で非常にわ かりにくい状況を作り出しています。 例えば、あるサイトを見ると、 「GPS は WGS84 座標系を使用している」 そして、ある資料にある測量法改正のメリットをみると、 「GPS と対応するので便利」 しかし、日本が新しく採用する世界測地系は 「ITRF 座標系 と GRS80 楕円体」 ここでズレが生じるのです。最初は WGS84 だったのに、いつのまにか話 題は ITRF へと変わっている... このあたりが非常にわかりずらく、あ やふやになってきます。 付け加えると、 「WGS84 座標系と ITRF 座標系は現在ほとんど同一のもの」 http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/datum/tokyodatum.html#p5 さあ、どんどんとハテナが増えてきたと思います。 ここでそのハテナを解決すべく今まで調べてきたことの中で、重要だと思 われる点についてまとめてみました。これを眺めると、ぼやっとしてきた ものが少しはっきりしてくると思います。そして、TNTmips として何を 行っていくべきなのか、その方向性が少し見えてくると思います。 ただ、正直なところまだ僕も理解不足な点がありますので、間違って いる点はご指摘ください。すぐに訂正メールをお送りいたします。 ●WGS84 座標系は細かいバージョンがあり、そのバージョンが特定され ない限り、1m の精度しかない。 ●また、WGS84 はバージョンが上がるにつれて、ITRF に近づいている。 ●高精度の測量を扱うには、WGS84 よりも ITRF が向いている。 まず重要なことは、高精度の測量を行っていくうえでは、定義上の精度 問題で、WGS84 ではなく ITRF 座標系が必要なことがわかりました。 大まかな座標系としては、両方とも同じものだが、厳密な座標の定義と して見ると、ITRF がより正確な定義をしているものだということです。 続いて... ●現在 GPS 測量で用いられている処理のほとんどは、WGS84 ではなく、 ITRF となっている。 ●アメリカの企業の多くはいまだに WGS84 という名称を使っているが、 そのほとんどは実は ITRF 座標系である。 つまり、WGS84 という言葉が氾濫しているのは、アメリカで管理・定義さ れている世界測地系ですので、当然アメリカで積極的に採用されるよう働 きかけが行われていたようです。 しかも、GPS という技術も アメリカの軍事技術が民間に提供されたも のですので、当然 WGS84 ありきという世の中だったようです。 現在は、その GPS の世界もほとんどが ITRF へ移行しているようです。 ●WGS84 という言葉には、世界測地系としての WGS84 という意味と、 もう少し厳密にした座標系としての WGS84、そして地球回転楕円体と しての WGS84 の3種類存在する。 ●一方で ITRF という言葉には 座標系としての意味しかない。測地系と して ITRF を使用する場合は、他に地球回転楕円体を用いる必要がで てくる。 (例. 測地成果2000 は ITRF94 座標系と GRS80 楕円体の組み合わせ) 座標系というのは、地球の中心がどこで、どの方向を基準にして3次元 的な位置を表現するかというものです。しかし、本来立体ではあるもの の地球表面に限定することで、平面投影することが可能となります。 そのため測地系には、どうしても地球表面を定義する、地球回転楕円体 を与えてあげる必要がでてきます。 このあたりでも、WGS84 という言葉が座標系なのか、楕円体なのか、 それともそれらを含めた測地系としての座標系なのかというあたりで混乱 を招いていたようにも思われます。 ●ITRF もいくつか種類があるが、ITRF94,ITRF96,ITRF97 は同じものと して扱っているようだ。 ●測地成果2000 では ITRF94 を採用しているが、海上保安庁水路部は、 ITRF96 を採用しているらしい。 ●現在、WGS84・現行の日本測地系・ITRF など相互の変換パラメータが 国土地理院よりでているものの理解するのに手間がかかる。 どうも世の中の流れは、ITRF を用いた世界測地系のようです。 つまり、TNTmips としても、ITRF というものに着目していく必要がある ということです。ver6.7 へ向けての目標が見えてきましたね。 この続きは、また情報がまとまり次第ご報告いたします。 長々として、わかりにくい文章におつきあいありがとうございました。 最後に、測量法改定のイメージ図を作ってみましたのでご覧ください。 参考文献・資料・サイト 土屋淳・辻宏道(1999):改訂版 GPS測量の基礎. 日本測量協会(1998):建設省公共測量作業規定. NIMA(2000):DEPARTMENT OF DEFENCE WORLD GEODETIC SYSTEM 1984. http://164.214.2.59/GandG/tr8350_2.html Jonathan Iliffe(2000):Datums and Map Projections. 国土地理院サイト http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/datum/main.html http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/software/ http://www.gsi.go.jp/LAW/kaiseijoho.html アイサンテクノロジー株式会社 中根さんのサイト http://www.aisantec.co.jp/special/jgd/solutiontool/kouza/jgd_kouza.htm ■■■ TNTmips の現状(ver6.6 β4) ■■■ [対応している主な座標系(Coordinate System)] ●LatLon:Latitude / Longitude (Datum を変えることで、WGS84,Tokyo-JAPANを選択可能) ●UTM:Universal Transverse Mercator ●Japan19:Japan-19 Plane Orthogonal ver6.6 では ITRF94,ITRF96,ITRF97系は定義されておりません。 [対応している主な回転楕円体(Ellipsoid)] ●6378137.0 m, 298.257222101, GRS80 ●6377397.1550 m, 6356078.962840, Bessel1841 ●6378137.0 m, 298.257223563, WGS84 [対応している主な測地系(Datum)] 3パラメータが多いですが、 ●World Geodetic System 1984:0.0, 0.0, 0.0 ●Tokyo - Japan:-147.5, 507.26, 680.47 ■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■ 今週のプチ・テクニック """"""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""" " " 自分が今使用している datum のパラメータは " どんな値なのか? " " 案外気になりますよね。 " " TNTmips の 投影法に関係するパラメータはテキストファイルとして " 閲覧することができます。TNTmips がインストールされているフォル " ダ(例えば c:\TNT_WIN とか)の中にある " " mapproj4.txt " " というファイルを、メモ帳や秀丸などのエディタで見てみると、 " 中にずらっと記載されています。 " " 結構これ以外にも、おもしろいテキストファイルが... " あ、でもあくまで見るだけにしてくださいね。 " " いじってしまって TNTmips が動かなくなっても " 責任取れませんので...(笑) " " """"""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""" New Things 最新情報 ================================================================= = = 先週の話題でした、ピンマップ機能の描画エラー修正についての情報 = 更新いたしました。 = http://www.opengis.co.jp/htm/patch/patch.htm#THIRD = = ちょっとしたことですが、所属や住所が変更されたときの手続き用紙 = を WEB 上からダウンロードできますが、いままで PCX 形式の画像デ = ータだったものを PDF に変更いたしました。また、記入例もダウン = ロードできます。 = http://www.opengis.co.jp/htm/info/register.htm = ================================================================= バグ・トラブル情報 ??? ??? 今週はとくにありません。 ??? 来週から、ver6.6 に関する情報が登場するはずです。 ??? ??? 今週の話題 on メーリングリスト ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ~ ~ 引き続き、測地成果2000 についての情報交換がされております。 ~ とくに、GIS メーカーとして国土地理院へ相談してみては? ~ というアドバイスもいただきました。 ~ ~ ある程度状況をまとめまして、国土地理院へ相談する予定でおります。 ~ ~ ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ メーリングリストに参加されたい方は、 info@opengis.co.jp までご連絡ください。 弊社からの対応は バグ対応と、新製品告知のみですが、 ユーザーさまの間での情報交換の場として 多くの方に利用されています。 ############# このメールマガジンの配信について ################ このメールマガジンは、 年間テクニカル・サポートに加入されている、 ユーザーさまのみを対象としております。 基本的には、登録アカウント1つに対して 1ユーザーを配信対象としておりますが、 例えば、研究室の予算で加入された場合などは、 ご購入いただいた指導教官と、実際に TNTmips で作業を行う学生1名の、 計2ユーザーを対象として配信させていただきます。 1アカウントに対して合計3名以上の配信は行いません。 学生さん2名が同じくらい使用する場合は、 申し訳ありませんが、じゃんけん等で1人に決めてください。 また、テクニカル・サポートの期限を半年以上過ぎてしまった場合は、 メールマガジンの配信を停止させていただきます。 メールマガジンが配信されなくなった時は、 サポート期限が半年過ぎたとお考えください。 転勤、ドメイン変更などでメールアドレスが変わった場合は、 お手数ですが、弊社までご連絡ください。 テクニカル・サポート活用案内 >サービスその1:緊急なバグ情報はすぐにメール配信します。 >サービスその2:TNTmipsに関するどんな質問にも対応します。 >サービスその3:対応は最優先で行います。 >サービスその4:専用FAX質問用紙をお送りします。 >サービスその5:電話・電子メールも、もちろん最優先で対応いたします。 >サービスその6:週に1回メールマガジンを配信します。 >サービスその7:展示ブースへご来場の方には特製オリジナルグッズを進呈。 >サービスその8:現在計画中です... 「これで年間9万円は安い!!」と感じていただけるような サービスを提供していきたいと考えております。 よろしくお願いいたします。 ============ おことわり ============= ※OpenGIS Mail Magazine for T.S.Uでは、 TNTmipsに関わる新しいニュースを、 毎週金曜日の朝に、皆さまへご提供させていただきます。 ※このメールマガジンの転載・転送はご遠慮ください。 ================================