Subject: [ts-mag:00126] OpenGIS Mail Magazine for T.S.U 【第 331号】
    Date: Wed, 26 Mar 2008 09:47:00 +0900
    From: WAZA Toshihiko


OpenGIS Mail Magazine for Technical Support Users     2008/03/21
Keywords: OpenGIS,TNTmips, 地形補正, Minnaert補正, 大気補正

オープンGIS
テクニカル・サポート専用メールマガジン

第331号「 Minnaert 補 正 の S M L 」
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                       株式会社 オープンGIS



今回は、”Minnaert補正”を行なうSMLをご紹介します。

藤田が担当しました。


・・・


Minnaert補正とは、なんでしょう?

太陽光の差し込む“角度”や“方位”と、地表面の“傾き”や“向いて
いる方位”によって、たとえ同じ物質でも暗く見えたり、明るく見えた
りします。これは言い方を変えると、

「暗く見える」	→	反射率が低い
「明るく見える」	→	反射率が高い

と言うことが出来ます。

地形によって引き起こされる反射率の違いを補正する方法の一つが、今
回ご紹介する“Minnaert補正”です。

Minnaert補正についての参考文献は、文末に書いておりますので、詳し
くはそちらをご覧下さい。


作成したSMLはこちらになります。

Minnaert.sml:
 http://www.opengis.co.jp/sml/sml_basic/minnaert/minnaert.sml


今回はユーザー様からお借りしたAVNIR−2データを使って、この
SMLの使い方を解説していきます。
 
 

※注意
Minnaert補正は、地形特性の補正です。そのため、衛星データの各ピク
セルとDEMデータの各ピクセルの地理的な位置が合っていないと正し
い結果が得られませんので、必ずオルソ補正済みのデータでお試しくだ
さい。

またこのSMLは、AVNIR−2用のMinnaert補正SMLです。AV
NIR−2は直下視型のセンサであること。さらに、センサはあくまで
受信する側であり、どこで受信していても反射率には大きな影響を与え
ないのではないかという考えから、このSMLは「センサが天頂にある」
と仮定して作っています。

なので、他の衛星に対しても有効なSMLであるとは断言できません。


・・・


まずは、Minnaert補正を行なうのに必要なデータを作成します。

1)DEMデータとAVNIR-2のライン数とカラム数、ピクセルサイ
ズが同じになっているか確認します。ライン数とカラム数、ピクセルサ
イズが同じではない場合は、衛星画像をリファレンスラスタとしてDE
Mデータをリサンプルします。


2)DEMデータから斜面傾斜角(Slope)と斜面方位角(Aspect)を計
算します。

▼ メインメニューから[ラスタ]>[標高]>[地形特性...]を選択
します。
 
 
▼[ラスタ]ボタンからDEMデータを選択し、

傾斜:32ビット浮動小数点(単位:度)
方位:32ビット浮動小数点

として実行します。
 
 

3)Minnaert定数を求めるための領域(サンプリングエリア)を決めま
す。サンプリングするエリアが1、それ以外が0のバイナリラスタを作
成します。

▼ メインメニューから[メイン]>[編集...]を選択します。
 
 
▼ DemデータとAVNIR-2データを表示します。
 
 
▼ Demデータは画像撮影時の陰影を表示します。

AVNIR-2のサマリーから、撮影時の太陽の高度と方位は次のように
なります。

太陽高度:46.24
太陽方位:168.66


 
撮影時の陰影は次のようになります。
 
 
▼ 新規ラスタを作成します。<エディタ‐レイヤマネージャ>ウィンド
ウの[新規オブジェクト]>[ラスタ]を選択します。
 
 
▼[暗黙のジオリファレンス]欄ではAVNIR-2画像を選択し、バイ
ナリラスタを作成します。
 
 
▼ 陰影表示したDEMデータとAVNIR-2の画像データを使ってサ
ンプリングエリアを選定します。サンプリングのポイントは、地形の起
伏によって反射率が低くなっている場所とそうではない場所を半々でと
ることです。
 
 
 
 
このように、数ヶ所サンプリングしましたらバイナリラスタを保存しま
す。
 
 

以上で準備完了です。


4)Minnaert補正の実行

▼ メインメニューの[スクリプト]>[実行...]を選択し、ダウンロ
ードしたSMLを選択します。[エンコーディング]を日本語
(Shift-JIS)に設定してください。
 
 
補正するために必要なデータを選択します。

▼AVNIR−2の画像データを選択します。画像データは一つずつ補
正していきます。
 
 
▼ 先ほど作成したバイナリラスタを選択します。
 
 
▼DEMデータから計算した斜面傾斜を選択します。
 
 
▼ 斜面方位を選択します。
 
 
▼ 補正に使うパラメータを入力します。まず、補正するAVNIR-2
画像を撮影した時の太陽高度を入力します。先ほども確認したように、
太陽高度はAVNIR-2のサマリーに記載されています。今回使用して
いるデータの太陽高度は“46.24°”です。
 
 
▼ 太陽方位を入力します。今回使用しているデータの太陽方位は“
168.66°”です。
 
 
▼ 補正した画像の保存先を指定すると処理が始まります。
 
 
処理が終わると“Finished”というメッセージが表示されます。


※注意
Minnaert定数を知りたい場合は、メインメニューの[スクリプト]>[
スクリプトの編集...]から<空間操作言語(SML)>ウィンドウから
ダウンロードしたSMLを実行してください。<コンソールウィンドウ
>にMinnaert定数が表示されます。
 
 

Band2〜4に対しても同じ処理を行います。

なお、処理時間はAVNIR-2画像1シーンあたり15分程度かかりま
した。

<マシン環境>
OS		:Windows Vista Home Premium(32bitオペレーティングシステム)
プロセッサ	:AMD Athlon(tm) 64bit  ,Dual Core 2.00GHz
メモリ		:894MB


5)処理結果と補正前の画像を比較します。

▼ まずはトゥルーカラー(R:Band3 G:Band2 B:Band1)表示です。

補正前の画像です。
 
 
補正後のデータです。全体的に青くなってしまいました。補正前のデー
タの暗い部分が青くなっているために、全体的に青くなっているようで
す。
 
 
▼ 続いてフォールスカラー(R:Band4 G:Band3 B:Band2)表示し
ました。

補正前の画像です。
 
 
補正後のデータをフォールスカラー表示しました。補正前に暗かった部
分がかなり減っています。
 
 
フォールスカラー表示をすると反射率の低い部分が補正されているのに、
トゥルーカラー表示すると全体的に青い画像になってしまうのはなぜで
しょう?


トゥルーカラー表示はBand3、2、1の3バンドの画像をそれぞれR、G、
Bに割り当てて表示しています。他方、フォールスカラー表示は、Band4、
3、2の3バンドの画像を使っています。

これらの間には、トゥルーカラー表示ではBand1、フォールスカラー表
示ではBand4を使っているという大きな違いがあります。

Band1は観測波長が短いため、大気の影響を最もよく受けます。他方、
Band4はAVNIR−2の中では最も長い波長を観測した結果です。

大気の影響を最もよく受けているBand1使っているトゥルーカラー表示
では全体的に青い画像になってしまいますが、大気の影響を最も受けな
いBand4を使ったフォールスカラー表示では問題はありません。

このことから、トゥルーカラー表示すると全体的に青い画像になってし
まうのは、大気の補正を行っていなかったためと考えられます。


そこで、大気の補正としてBand1、2、3からパスラジアンスを除去し
たデータに対してMinnaert補正を行ないました。

パスラジアンスの除去については、「環境リモートセンシング(RSE)の
概要」の22ページで解説しています。

TNT入門「環境リモートセンシング(RSE)の概要」
 http://www.opengis.co.jp/getstartj/RSE.pdf

LandsatTMであれば、Band7を基準として各バンドのパスラジアンスを除
去するのですが、AVNIR−2で最も観測波長が長いのはBand4なの
で、Band4を基準にパスラジアンスの除去を行いました。

結果はこのようになりました。
 
 
全体的に青い画像だったのが、反射率の低い部分が明るく表示されてい
ます。


最後に、このSMLの全体像をフローチャートにまとめました。

Minnaert補正のフローチャート:
 http://www.opengis.co.jp/img/faq/minnaert/minnaert_flow.pdf



<参考文献>

●村上拓彦・藤井秀亮・今田盛生「ランドサットTMデータにおける地形
による影響の補正方法の比較 九州大学宮崎演習林内のスギ林分を対象
として」九大演報.78:13-28, 1998

●村上拓彦「SPOT/HRVデータから森林タイプ別に求めたMinnaert定数」
写真測量とリモートセンシング.41(1):47-55, 2002

●古家直行「ALOS/AVNIR-2 を用いた林相区分の試み」
 http://www.restec.or.jp/eeoc/alos/forest/4.pdf

●伊藤久朗・小川 進「Landsat-TMによる奥多摩森林域の材積の推定」
http://www.chikatsu-lab.g.dendai.ac.jp/s_forum/pdf/2003/30_itou.pdf

●加藤正人編著「森林リモートセンシング」p.86-88, (株)日本林業技術
調査会







□■Feature Management Database の利用□■
===============================================================

「エラー番号」や「機能要求番号」は、マイクロイメージ社のフィーチ
ャ・マネージメント・データベース(Feature Management Database)に登
録されています。
 http://www.microimages.com/support/features/

状況を確認するには、番号を入力して、
 
 
ステータスをチェックします。
 
 
===============================================================





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	<目次>
	1.空間データの表示
		2次元データの表示
		3次元鳥瞰図の作成
	2.衛星データの取り込み
	3.ジオリファレンス
		地図画像への座標情報付与
		衛星画像への座標情報付与
	4.GPSデータの取り込み
	5.標高データの解析
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		断面図の作成
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困ったときの問題解決フローチャート

▼STEP1「ウェブサイトで検索してみる」
▼STEP2「ウェブサイトにある情報を眺めてみる」
▼STEP3「ドキュメントを読んでみる」
▼STEP4「メーリングリストへ聞いてみる」
▼STEP5「テクニカルサポート」



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 ▽オープンGIS検索システム
 http://www.opengis.co.jp/htm/namazu.cgi
 ▽メールマガジン検索システム
 http://www.opengis.co.jp/mail_mag/namazu.cgi
 ▽マイクロイメージ検索サイト
 http://www.microimages.com/search/
 ▽Google 検索
 http://www.google.co.jp/
 とくに、and検索(キーワードの間に空白)、not検索(キーワードの前に
 - や not を入れる)、とは検索(キーワードの後ろに "とは" をつける)
 を使いこなすと、便利です!


STEP2 「ウェブサイトの有用な情報源」
 ▽オープンGIS ウェブサイト「基本操作」
 http://www.opengis.co.jp/htm/basic/title.htm [日本語]
 ▽オープンGIS ウェブサイト「メニュー解説(Flash)」
 http://www.opengis.co.jp/flash/index.htm [日本語]
 ▽オープンGIS ウェブサイト「SML スクリプトの解説」
 http://www.opengis.co.jp/sml/sml_index.htm [日本語]
 ▽オープンGIS ウェブサイト「作業で必要となる情報を集約したポスター類」
 http://www.opengis.co.jp/htm/gallery/index.htm [日本語]
 ▽オープンGIS ウェブサイト「メルマガバックナンバー」
 http://www.opengis.co.jp/mail_mag/index.htm [日本語]


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 http://www.opengis.co.jp/htm/documents.htm [日本語]
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 http://www.opengis.co.jp/htm/info/book.htm [日本語]
 ▽マイクロイメージウェブサイト「ワンポイントテクニック集」
 http://www.microimages.com/didyouknow/ [英文]
 ▽マイクロイメージウェブサイト「TNT入門(Getting Started)」
 http://www.opengis.co.jp/htm/getstart/getstart.htm [日本語]
 http://www.microimages.com/getstart/ [英文]
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