Subject: [ts-mag:00205] OpenGIS Mail Magazine for T.S.U 【第 194号】
    Date: Fri, 25 Mar 2005 20:55:42 +0900
    From: Taichi FURUHASHI

OpenGIS Mail Magazine for Technical Support Users      2005/03/25
Keywords: OpenGIS,TNTmips,SPOT,Harmonic,LMF,TAB,Dissolve,Desktop


オープンGIS
テクニカル・サポート専用メールマガジン

第194号「   邪  魔  な  雲  と  の  戦  い  ! !   」
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                       株式会社 オープンGIS



魔法のように雲が消えたらなぁ...

リモートセンシングをやっていますと、空のはるか上から地球を撮影する
ことが多いので、どうしても雲が間に入ってくることがあります。気象衛
星は別として、多くの場合、雲は邪魔者扱いです。雲の影響が少ない観測
手法を選んだり、画像から雲の部分を切り取るなど、苦労が絶えません。

晴れている画像だけを選択的に使用すればよいのでは? と思われるかも
しれませんが、実際にたくさんの衛星画像の中から一生懸命探しても、理
想的な画像にめぐり合うのは案外難しいものです。



ところが、ある処理を行うと、こんなことが可能になります。

左が処理前の画像。右が処理後の画像。



左側にあるたくさんの雲が、右側では綺麗に消えていますね。

この魔法のような処理が注目したのは季節変化。SPOTという衛星の画
像から、植物の活力度を指数化したNDVI画像が10日間合成で提供され
ています。残念ながら雲の影響は取り除かれてはいません。けれど、毎回
画像が蓄積されることで、おおまかなNDVIの季節変化はわかります。
例えば、日本では春の新緑とともにNDVI値が大きくなり、夏のピーク
を過ぎると紅葉シーズンには小さくなることが多いですが、逆にそのこと
がわかっていれば、例えば九月の上旬に天気が悪く、まったく観測できな
かったとしても、8月や10月の値から大まかに推測できます。

今までの衛星画像は、その画像情報の範囲内だけでノイズやエラーを除去
しておりましたが、このテクニックでは、時間変化の典型的なパターンを
いろいろな周期の波の合成として表現し、抜け落ちている情報を補ってく
れるのです。

だんだん話がややこしくなってきましたので、具体的な話題に移ってきま
しょう。作業の大まかな流れは、次の4段階です。なめらかにして→周期
を計算して→必要な情報を取り出して→元の画像を復元!

 (1)局 所 最 大 値 補 正: 異常データの補正(なめらかにする)
 (2)Harmonic Analysis 処 理: いろいろな周期の波を計算
 (3)振 幅 強 度 と 位 相 の 取 り 出 し: 必要な波の情報を取り出す
 (4)デ ー タ の 再 構 築: 波の情報から元の画像を推測

それぞれの作業をご紹介いたしましょう。


●


まず最初にどのようなデータで利用可能なのでしょうか?

今回ご紹介させていただくデータは10日間平均の画像が36枚、つまり1年
分のセットです。それぞれのライン数とカラム数は同じでなければなりません。



(1)局所最大値補正で雲の影響を大まかに取り除こう!

  NDVIの異常値(雲などによって正しい値が得られていない場合)は、
  元々の値から急激に値が下がります。ある場所のNDVIを、1年間
  通して眺めてみると、雲が覆っていたときだけ、深い谷のように切り
  込みが入ります。

  

  このデータに対して、前後4時点の最大値を比較し、どちらか小さい方
  を採用して置き換える "局所最大値補正" をおこなって、深い谷をなめ
  らかにしましょう。

  

  この補正を行うことで、ギザギザしていたデータが少しなめらかになります。

  

  実際のLMF処理はSMLがありますのでそちらをご利用ください。
  Harmonic4TimeSeries_v10.sml



(2)Harmonic Analysis処理で周波数の組み合わせを計算。

  メインメニューより [解析処理]>[ラスタ]>[組み合わせ(演算)]>[調和
  級数(Harmonic Series)解析…]機能を実行します。

  途中、作成されるラスタ数を確認されますが、必ず求めたい周期数+1
  の値を入力してください。この+1は定数項になります。36枚の場合、周
  期数は6くらいが適当とのことです。例えば、周期数6として10日間合成
  のデータを1年分(36画像)使用した場合、各ファイルは以下のような周期
  項のパラメータを意味します。

   Additive :定数(平均)
   Harmonic_1:1年周期項の振幅強度パラメータと位相パラメータ
   Harmonic_2:半年周期項の振幅強度パラメータと位相パラメータ
   Harmonic_3:4ヶ月周期項の振幅強度パラメータと位相パラメータ
   Harmonic_4:3ヶ月周期項の振幅強度パラメータと位相パラメータ
   Harmonic_5:2ヶ月周期項の振幅強度パラメータと位相パラメータ
   Harmonic_6:1ヶ月周期項の振幅強度パラメータと位相パラメータ



(3)振幅強度/位相セットをそれぞれ分離する

  出力された Harmonic_* ラスタは、振幅強度(Magnitude)と位相(Phase)
  がセットで組み込まれているComplexラスタですので、そのまま
  では扱いにくいです。そこで、メインメニューから [解析処理]>[ラス
  タ]>[抜き出し…]機能を使いまして、それぞれをバラバラのラスタと
  して出力(Magnitude_* と Phase_* としてそれぞれ命名)します。
  ここがややこしいですね。



(4)波のモデルから36時期データの再構築

  最後に、得られました Additive ラスタ、Magnitude_* ラスタ、Phase_*
  ラスタを使いまして、各36時期ごとのラスタを再構築します。すべての
  ピクセルについて、1年間の季節変化をモデル化しているわけですから
  驚きです。しかも大型計算機ではなくパソコン上でこのような計算が行
  えるようになったということが時代を感じます。

  実際のデータ再構築処理はSMLがありますのでそちらをご利用ください。
  Harmonic4TimeSeries_v10.sml

  ▼最終的にできあがった画像の時系列を見てみましょう!

  

  いかがでしょうか。最初のギザギザしていた雲の影響が取り除かれ、
  LMFよりもさらになめらかな変化パターンが確認できます。
  あとは、複数時期を組み合わせてカラー合成をしたり、画像分類情報
  として利用したり、その応用方法はアイディア次第です!


●


と、ここまで、いかにも弊社でやったかのように書いておりますが、この
機能、実際の作業や機能要望などは(社)日本森林技術協会の和田さま、大
平さまが中心となって行われたものです。メルマガではその流れを簡単に
まとめてご紹介いたしました。

ここまで資料とSMLを提供していただいた日本森林技術協会の皆様に感謝!




詳しい内容が知りたい! という方は、是非以下の参考資料をご覧ください。

■Harmonic Analysis によるタイムシリーズデータの再構築
http://www.opengis.co.jp/img/faq/harmonic/HarmonicSeriesJ.pdf
(日本森林技術協会 和田幸生著)

■Yukio WADA, Wataru OHIRA(2004):Reconstructing Cloud-Free SPOT/Vegetation Using Harmonic Analysis with Local Maximum Fitting. 25th ACRS 2004 Chiang Mai, Thailand.
http://www.microimages.com/papers/ACRS25.pdf



その他、参考文献としまして以下の論文もあります。

■M.E.Jakubauskas, D.R.Legates & J.H.Kastens, 2001. Harmonic Analysis of Time-Series AVHRR NDVI Data, Photogrammetric Engineering & Remote Sensing

■沢田治雄・澤田義人(2002) 高頻度観測衛星データに基づく植生季節変化のモデル化.環境情報科学論文集16










今週の新プチ・テクニック
"""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""""
"
" ラインを選択したいのにポリゴンが選ばれてしまう...
"
" データエディタなどでポリゴンやラインなどを選択する場合、なかな
" か理想通りに選択できない場合があります。
" そんなときはイライラせずにTABキーを押してみましょう。
"
" 選択した要素周辺の別の要素を順に選択していきますので、目的の
" 要素が紫色に変わったらOKです!
"
"
""""  隔 週 で 新 / 過 去 テ ク ニ ッ ク を 交 互 に 発 信  """"




New Things 最新情報
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= 第188号「邪魔なラインはディゾルブで消去! 」 【メルマガ】
= http://www.opengis.co.jp/htm/kako_mail/mail_mag_188.htm
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バグ・トラブル情報
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??? デスクトップとあるけど、違うじゃないか!!
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??? ver7.0 以降のデータ選択ダイアログで、ファイルやオブジェクトな
??? どを選択しますが、よく使うのが最近使用したフォルダへジャンプ
??? できる [移動…]ボタン。
??? 
??? けれど、この中に登場する [デスクトップ] メニューを選択しても
??? デスクトップフォルダではなく、その一つ上のホームへジャンプし
??? てしまう現象がありました。
???
??? もし、気になる場合は、お手数ですが以下のサイトより、最新の修
??? 正パッチ(23Mar05以降) をダウンロードし、当てていただけますで
??? しょうか。ちょっとしたことですが気になりますよね。
??? http://www.microimages.com/freestuf/tntpatch/
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??? お手数おかけいたしますが、よろしくお願いいたします。
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今週の話題 on メーリングリスト
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~ 今週は特にありませんでした。
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困ったときの問題解決フローチャート

▼STEP1「ウェブサイトで検索してみる」
▼STEP2「ウェブサイトにある情報を眺めてみる」
▼STEP3「ドキュメントを読んでみる」
▼STEP4「メーリングリストへ聞いてみる」
▼STEP5「テクニカルサポート」



STEP1 「ウェブ検索テクニック」
 ▽オープンGIS検索システム
 http://www.opengis.co.jp/htm/namazu.cgi
 ▽メールマガジン検索システム
 http://www.opengis.co.jp/mail_mag/namazu.cgi
 ▽マイクロイメージ検索サイト
 http://www.microimages.com/search/
 ▽Google 検索
 http://www.google.co.jp/
 とくに、and検索(キーワードの間に空白)、not検索(キーワードの前に
 - や not を入れる)、とは検索(キーワードの後ろに "とは" をつける)
 を使いこなすと、便利です!


STEP2 「ウェブサイトの有用な情報源」
 ▽オープンGIS ウェブサイト「基本操作」
 http://www.opengis.co.jp/htm/basic/title.htm [日本語]
 ▽オープンGIS ウェブサイト「メニュー解説(Flash)」
 http://www.opengis.co.jp/flash/index.htm [日本語]
 ▽オープンGIS ウェブサイト「SML スクリプトの解説」
 http://www.opengis.co.jp/sml/sml_index.htm [日本語]
 ▽オープンGIS ウェブサイト「作業で必要となる情報を集約したポスター類」
 http://www.opengis.co.jp/htm/gallery/index.htm [日本語]
 ▽オープンGIS ウェブサイト「メルマガバックナンバー」
 http://www.opengis.co.jp/mail_mag/index.htm [日本語]


STEP3 「ドキュメントを読んでみる」
 ▽オープンGIS ウェブサイト「その他ドキュメント一覧ページ」
 http://www.opengis.co.jp/htm/documents.htm [日本語]
 ▽オープンGIS ウェブサイト「チュートリアルテキスト&リモセンテキスト」
 http://www.opengis.co.jp/htm/info/book.htm [日本語]
 ▽マイクロイメージウェブサイト「ワンポイントテクニック集」
 http://www.microimages.com/didyouknow/
 ▽マイクロイメージウェブサイト「TNT入門(Getting Started)」
 http://www.opengis.co.jp/htm/getstart/getstart.htm [日本語]
 http://www.microimages.com/getstart/ [英文]
 ▽マイクロイメージウェブサイト「リファレンスマニュアル」
 http://www.microimages.com/refman/


STEP4「メーリングリストへ聞いてみる」
 メーリングリストに参加されたい方は、
 info@opengis.co.jp までご連絡ください。
 弊社からの対応は バグ対応と、新製品告知のみですが、
 ユーザーさまの間での情報交換の場として
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STEP5「テクニカルサポート」
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############# このメールマガジンの配信について ################

このメールマガジンは、
年間テクニカル・サポートに加入されている、
ユーザーさまのみを対象としております。

基本的には、登録アカウント1つに対して
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>サービスその2:TNTmips に関するどんな質問にも TEL/e-mail/FAX で対応。
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>サービスその7:サポート対応で FTP サイトを 20MB まで利用できます。
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