◆POLSARPRO 講習会に参加して(02 Oct 2008)

9月24日から26日の3日間、東北大学東北アジア研究センターの主催で、 以下の講習会が東京駅近くの東北大学東京分室において開催されました。 「講習会:レーダ・リモートセンシング画像の解析と応用 −SAR偏波計画像(ALOS/PALSAR)の応用解析を中心に−」 http://cobalt.cneas.tohoku.ac.jp/users/sato/SAR-Tutorial2008.pdf 筆者も参加しましたが、非常に有益な内容でしたので、そのときの様子 を簡単ですが、ご紹介させていただきます。 標題の「POLSARPRO(ポル・サー・プロ)」とは、ソフトウエアの名前で (Polarimetric Sar Processor の略称)、レーダの偏波を利用してリモ ートセンシングを行なう、欧州宇宙機関(ESA)のプロジェクトが開発して いるフリー・ソフトウエアです。 http://earth.esa.int/polsarpro/default.html 今回の講習会は、当初20人程度を予想していたそうですが、いざふたを 開けてみると100人近くの方が申し込みをされたそうです。 講習会の1日目は、東北大学の佐藤教授による講義で、2,3日目は客 員教授の飯坂先生によるPOLSARPRO を使った実習がありました。 ・・・ 講義は、電波による地球観測のイントロダクションから始まって、波動 方程式、電場と磁界、SARの原理といった内容で、内容的には高度で すが、非常に整理された形で行われました。 全体を通して以下のことを知りました。 ●通常の光学センサーは、その波長の短さから地表面の分子的な性質を 見ているのに対して、レーダはもっとマクロな導電体としての性質を見 ている。 ●レーダは波長が長いので樹幹に入り込みます。木の高さを求めたり、 土壌の水分を求めたりすることができます。 ●偏波の位相情報を使うと、山の傾斜や家屋の屋根の向き、鉄道の曲が り具合などが分かるそうです。 ●散乱の程度を表わす係数として、SHV などの記号を用いますが、最初 のH は受信時の偏波の状態、2番目のV は送信時の偏波の状態を表すと のことでした。Hは、電磁波である光の電場の振動方向が地面に水平な 場合で、Vは地面に垂直な波を表しています。 従って、SHV とは、地面に垂直な偏波を持つレーダを発信して、地面や 樹木などで散乱されてHで戻ってくる波を表しています。他に、SHH, SVH, SVV の、合わせて4種類の係数が存在します。 ●専門分野によって、電場、電界、電力などと呼び方が違うそうです。 本講義では、電場と呼んでいました。 ●ランドサット衛星などの光学センサーのマルチスペクトル画像では、 1つの画素に対して6バンド(7バンド?)のベクトルデータが対応し、そ れを解析・分類の対象としていますが、偏波レーダ画像では1つの画素 に対して、SHH, SHV, SVH, SVVの4つののパラメター(散乱係数)が 2x2で並んだ行列(散乱行列)が対応するとのことです。実際は、SVH とSHVは同じということで、独立な情報は3個ということです。 ●散乱の形式としては、樹木のてっぺんなどでレーダが1回散乱する"表 面散乱"、樹木の内部に入って枝や葉で散乱して出てくる"体積散乱、地 面→樹幹で2反射して戻る"2回反射"などがあります。 ●光学センサー(ランドサットなど)のフォールスカラー表示のように、 レーダ偏波でも散乱係数をRGBに割り当てて表示することがあります。 (偏波合成画像) R...2回反射 G...体積散乱 B...表面散乱 あるいは、 R...SHH G...SHV B...SVV ●ALOS/PALSAR の取得するSARデータのうち、偏波情報を含むものは、 全体の10%程度であるということでした。 などなど。 ・・・ 2,3日目の飯坂教授の実習は、先生の健康状態もあって、なかなかス ムーズに進みませんでしたが、この分野の一人者から話が聞けただけで も有難かったのではないでしょうか。 今回の講習会では、レーダの手法や偏波処理について、非常に内容の濃 い講義を受けました。マルチスペクトル画像などとの違いも分かり、リ モートセンシング技術への理解が深まった気がします。 幸いなことに、同じ講習会が、祝日をはさんで来る10月10,14,15日の3 日間、仙台で開催されます。仙台での講習会の申し込みは以下のページ からできます。 http://cobalt.cneas.tohoku.ac.jp/users/sato/index-j.html 参加費は3日間で10,000円で、メールで申し込みをします。ただし、申 し込みの期限が10月3日になっていますので、希望される方は早目にお申 し込みください。 内容はかなり高度でしたが、目から鱗(うろこ)の講習会でした。 ・・・ (補足)POLSARPRO のインストール情報 POLSARPRO は、以下のサイトから入手できます。今のところ、Windows 版とLinux 版(Unix 版)があります。(Mac版は開発中) http://earth.esa.int/polsarpro/install.html "Download and Install POLSARPRO Package"をクリックすると、ユーザ 情報の登録の画面に移り、入力後 "submit"ボタンを押すと、ダウンロー ドの画面に移動します。 Windows 版のインストールは簡単でした。ダウンロードしたファイルを ダブルクリックすると、インストールが開始しました。最後にActive Tcl(GUIの開発キット)のインストールで終わりです。 ちなみに筆者はガンマの時と同じく、Mac Book(Core2Duo, OS はLeopard) を使いました。Boot Camp を使って Windows XP Home を導入しました。 Linux 版の場合(Ubuntuを使用)は、プログラムのコンパイルもしないと いけませんでした。 Windows Vista にもインストールしてみましたが、Active Tcl のデモメ ニューがスタートボタンに登録されない程度で、本体の操作は特に問題 ないように感じました。しかし、ソフトを使いこなしている分けではな いので、Vistaで大丈夫かどうか、何とも言えません。初めての場合は、 Windows XP が無難かもしれません。 起動して、チュートリアルなどの PDFファルを閲覧するために、[?] の アイコンを押して、Arcbat Reader ファイルを指定します。プログラム のある場所が自動検索されて、設定が完了します。 ・・・ ガンマソフトウエアでは、偏波データに対する処理機能は特に用意して おりません。今回の講義に出てきました「偏波の分解(Decomposition)」 といった機能も現状ではサポートしておりません。ただし、偏波チャン ネル間の位相のオフセットやコヒーレンスの計算については、通常の干 渉SARの手法を使って計算できるとのことです。 ポラリティに関して、ガンマSARに具体的な要望がございましたら、 お聞かせください。(輪座) (株)オープンGIS